家を建てる前に読みたいお話
2019.11.22

家を建てる前に地盤の話 地味ですが大事なお話です

地震に強い家を建てるなら、まずは地盤のお話


長年建築に携わっていますが、案外地盤の事を気にされる方が少ないように感じます。気にした所で分からないし、建築屋に調査や改良を任せるしかないよね、という感じでしょうか。

 

大きな地震を何度も経験したことから、基礎や建物の強さにはこだわる方が増えてきて、それはいい傾向にあると思います。しかし丈夫な基礎、丈夫な建物を作ったところで、それを支える地盤がしっかりしていないと元も子もないわけです。

 

地盤の見分け方 

地盤の見分け方 地形・地名編

まずは、家を建てるための土地を探す時のポイントです。土地を持っておられる方にも当てはまる事があるので目を通してくださいね。

 

地形で言えば一般的に山地、丘陵、台地は比較的安定した地盤とされています。しかし傾斜地や崖周辺では土砂崩れ等の危険性があります。低地は水が集まって来やすく、地下水位も浅く地質も軟弱な傾向が見られるため、一般的に弱い地盤と言えます。盛土や埋め立ても造成からの年数が浅ければ沈下の可能性は大きいです。

 

地名により地形・地質を推測することもポイントです。沼・洲・浜・池・沢・潮・浅・深・渡など、「さんずい」の付く漢字や、川・河・魚・貝・下・窪などは軟弱な場合があります。特に液状化しそうな土地は要注意です。液状化対策を個人レベルですることはとてもとても難しいので避けたいところですね。実は液状化は専門家でも免振になるから建物の揺れは少ないという考えがあるんですが、確かに揺れは地盤に吸収され少なくなるでしょうが、地盤沈下や建物の傾きは起こるので元に戻すのが大変です。

 

地盤の見分け方 造成地編

新しい造成地にでは切土(きりど)と盛土が混在している場合もよくあります。切土部分は強い地盤、盛土部分は弱い地盤となるので混在部分に建てた場合は不同沈下(建物が斜めに沈む)が起こりやすくなります。擁壁のある所も注意が必要です。擁壁には土圧という力がかかってきます。土の自重により外に広がろうとする力ですね。それにプラス建物の重量がかかってきます。擁壁からの距離によっては建物重量は影響しない場合もありますが、擁壁を作る時にどこまで含めて計算されているか確認した方がいいでしょう。土圧だけの計算か、平屋程度の計算か、2階3階建を想定しての計算かによって不同沈下や酷いと擁壁が崩れる可能性もでてきますからね。どれも絶対駄目ということはなく、対策がとれるもの、対策されているものもあるので確認して判断されればいいかと思います。

 

地盤調査で軟弱地盤か否かを調べる

どんな地盤なのか地質なのかなかなか素人には分かりませんし、すでに購入してしまった、あるいは元々所有いる、などあると思いますから、ここからは地盤調査について話してみましょう。

 

まず、地盤調査の方法はいくつかありますが、主に一般住宅では2種類が主流となっています。一番多いと思われるのがスウェーデン式サウンディング試験。(名前が長いのでSWS試験と表示される場合が多い)これはスクリューポイントとロッドと言われる鉄の棒にドリルが付いたような物に重りを乗せて回転させ、沈んでいくのにどれだけの重さとどれだけの回転が必要かを計ることで、硬さ軟らかさを測定していきます。大まかな土質も分かります。オプション等で地下水位も分かる調査もあるので、液状化が気になる場合は合わせて調査した方が良いでしょう。

 

主流のもう一つは、表面波(レイリー波)探査法です。起振器で振動を起こし、伝わり方や速さによって地盤の硬さ軟らかさを判断する方法です。土質は判断できませんが、コンクリートの硬い所や地中の障害物などが感知できます。SWS試験より費用が少し高めのケースが多く、近くを走る大型車の振動も検知するケースもあるので、弊社ではSWS試験をメインとしています。

 

一般的に普及しているSWS試験を基本として話を進めます。
まず、この調査はある程度建物及び配置プランが決まってから実施するのに向いています。基本は5か所程度のポイントで測定します。建物4隅と中心です。建物が大きかったり複雑だったりデーターが取りにくい箇所があったりするとポイントを増やします。同じ敷地内でもポイントによって全然数値が違うのと、建物の重量もポイントによって全然違うからです。例えば2階建て部分と平屋部分のある建物ですと当然2階建て部分が重くなってきますよね。以前お施主様に言われたことがあるのですが、『同じ住宅造成地で両隣も向かいの家も地盤補強してないって聞いてるのにウチだけ地盤補強必要っておかしくないですか?』。何十万円と係る工事ですから釈然としないのも分かるのですが、同じ敷地内でもポイントによって数値がまるで違う場合があるので、あり得ることなのです。

 

聞いたところによると、『他社のSWS試験で改良が必要となっても、ウチの会社は表面波探査法なんで地盤改良の判定が出にくいですよ。地盤改良費が浮きますよ。』と言う会社があるそうです。事実ならこれは怖い話です。表面波探査法でOKの判定が出ても、SWS試験で地盤補強が必要と判定されれば必要です。もちろん逆もしかり。その家で暮らす人の命に係わる調査ですから、そういった話をする会社で絶対に家を建ててはいけません。

 

地盤改良で強い地盤に直す

地盤調査の結果が出れば、大抵はその調査結果を元に地盤保証会社から考察が出て来るでしょう。住宅会社の標準基礎なら地盤改良工事無しでOKですとか、ベタ基礎ならOKですとか、表層改良が必要です、など出てきます。もちろん保証してもらうには守らなければなりませんが、本当に保証会社の指示通りの工事でいいのでしょうか?保証会社の考察は建物の形状・重量確認の上での考察ではありません。ここからが重要ですが、責任は設計者が負うものです。(例えば弊社)設計者は独自で調査結果を元に判断できる力を持っていないといけません。調査結果を読み解く力がないといけませんが、調査会社任せで調査結果が読めない会社が多いのも悲しいかな事実です。

 

ベタ基礎と布基礎について詳しくは別の回で説明するとして、『ウチの会社はベタ基礎だから安全ですよ』と言う会社はアウトです。建築の依頼をしてはいけません。理由はこちら。

 

それでは地盤補強が必要だと判定された場合。
主に地盤補強工事には、地盤改良・小口径杭・置き換え工法があります。
また、地盤改良には表層改良と柱状改良があります。
以下はご興味のある方だけお読み下さったらいいかと思います。

 

表層改良

表層改良は正式には『湿式浅層混合処理法』と難しい名前ですが、文字を読むとなんとなく分かると思います。地盤面から2メートルまでの深さに、良好な地盤がある場合に選択されます。その硬い地盤から基礎の下までの部分を、土とセメントを混ぜて固めてしまう工法です。建物の下全面で支持(支える)します。

 

柱状改良

柱状改良は『湿式深層混合処理工法』と言います。地盤面から2~8メートルが軟弱地盤の場合に適用される工事で、筒状に掘りながらセメントと土を混ぜ硬い地盤まで丸い柱(直径50~60cm)を作るイメージです。基本は基礎の下2メートル間隔、角・交点に入れますが、建物の力の流れ重量により決定します。

 

小口径杭

小口径杭には既製杭と鋼管杭があります。
既製杭とは地面に松や杉に防腐処理を施した木杭やPC杭を専用機で打ち込んでいきます。3m~12mで軟弱地盤が分布している時に適用されます。打ち込みながら支持力を確認できるので安全性は高いですが、コストが高いのが難点なのと耐久性の確認が必要です。


鋼管杭(小口径鋼管杭)は軟弱地盤が25メートル程度までなら適用できます。ストレート管は専用機により圧入します。直径10~15cm程度の鋼管の先に羽を付けて回転させながら硬い地盤まで打ち込む羽根付き鋼管杭もあります。柱状改良同様に基礎の下に入れていきます。傾斜地等で住宅の下が土砂崩れで鋼管杭が剥き出しで支えている映像を目にすることも多いです。

 

置き換え工法

置き換え工法とは超軟弱地盤や埋蔵文化財等で杭が打てない場合などに対応可能です。軟弱な原地盤を掘削・除去し、支持力の期待できる良質土に置き換える工法です。液状化に強いという意見もありますが、基本液状化地域には不向きです。

 

砕石パイル工法

柱状改良に似た工法で砕石パイル工法というのがあります。同じように筒状に掘っていき、砕石で柱を作るイメージです。構造の専門家の中でも疑問視される方もいらっしゃいますが、大丈夫な会社もあるという事です。

 

地盤に関するまとめ

このように地盤補強には色んな工法がありますが、基本、地盤・構造を理解している設計士に任せればいいことです。大切なのは地盤調査の必要性を理解して頂くのと、改良の指示が出た場合は適切な改良工事を行っていただくことです。「地盤改良費が浮きますよ」と言う会社には決して建築を依頼しないで下さい。

 

そうはいっても、改良が必要となるとそれなりにお金もかかることですし、これを読んで頂いているあなたの土地に、ちゃんとした調査の上で改良工事の指示が出ないことを祈っています。

 

 

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