2021.03.03最終更新日:2023/03/29

高気密高断熱の家の冷暖房設備はエアコンでいいのか

 

最近の高気密高断熱の住宅で使う冷暖房設備は基本的にはエアコンがベースになります。

 

逆に言うと、エアコンで生活できない家(夏暑く冬寒い)という事はしっかり高断熱高気密に仕上がって無いとも言えるのかもしれません。そうなっては後の祭りになってしまうのですが、、、

 

そうならない為にもまず、住まいを高気密高断熱のしっかりとした性能で造る事は必須です。

 

少し話は反れますが、2021年4月から住まいの省エネ性能がどれだけあるかを、契約時にお施主様へ説明する事が義務化されます。

 

建物を設計する建築士が、買主であるお施主様にこれから建てる家の省エネ性能を書面にて説明し(基準に適合しているか)、内容について了承を得なければなりません。

 

ここで、あなたの家の省エネ性能(断熱性能など)は把握できますので、あなたの希望する生活が出来るための性能が満たされなければ、再度設計を見直す必要もあるかもしれませんね。

 

世界的に見るとcoop21(通称パリ協定)で決められた温暖化対策が始まり、SDGs等環境への取り組みが一企業でも始まっています。

先日、菅総理も2050年にカーボンニュートラル、脱炭素社会を目指す事を宣言されました。

 

これからの世の中は、よりエネルギーを使わない省エネな暮らしにシフトしていきます。

 

家造りにおいては今のスカスカの断熱基準ではなく、もっと高断熱・高気密にした家が標準化し、発電時に二酸化炭素を排出しないクリーンエネルギーとしての太陽光設置はスタンダード化していくと予想されます。

 

高断熱・高気密は、もう特別ではなく当たりまえの家造りなのです。

 

このブログでは、これからのスタンダードとなる高断熱高気密の家造りで、どのような冷暖房機器を選べばよいか説明させて頂きます。

 

下記に、各冷暖房方式のメリットデメリットを書きましたので、そちらを読んで頂き、ご自身のスタイルに合った冷暖房機器のチョイスをしてください。

全館空調

全館空調とは、家全体の空調を一括して行うシステムです。

家の断熱・気密性能に左右はされますが、概ね10~15帖クラスのエアコン1台で冷暖房が可能で、ダクトを介して各部屋に風を送り冷暖房をしますので、家中どこにいっても温度ムラがなく快適な空間になります。

吹き出し口にファンは無く、比較的静音です。

昨今では、これに熱交換換気をミックスした物も出てきており、冷暖房だけでなく換気もシステムとして組み込める為、室内に余計な機器や吸い込み口吹き出し口が出てくる事なく、内・外部共にスッキリとした見た目と、安定した室温・湿度の管理が可能となります。

よって高断熱・高気密住宅にとっては非常に相性の良い設備機器であるといえます。

メリット

家中どこに居てもほぼ同じ温度で快適

湿度や換気の管理も可能

ヒートショックが起こりにくい

室外機は1台で外観もすっきり。

室内機は屋根裏等に設置し、ダクトで各部屋の床や天井に吹き出し口や吸い込み口を付ける為、こちらも見た目スッキリとなり美しい。

一般的な壁掛けエアコンに比べ、風を感じないので不快感がない。 

基礎断熱で床下も暖房する仕組みの場合、ほんのり床が暖かい。

デメリット

価格が高い。付属する性能にもよりますが、最低でも100万はかかる。

量販店などで市販されている機械ではないので、故障・交換の際に高額な修理代になる。

基本は24時間運転での全館冷暖房の為、エアコンに比べ少し冷暖房費が高め。

ダクトでの結露、カビの発生やホコリだまりなど、システムを理解して採用しないと問題がおこるかもしれません。

注意する点

熟練者による送風計画は必須。

全てのシステムが断熱材でパッケージされた中に設置されるため、修理が簡単ではない。

商品の交換が容易でない為、長期保証は必須。

壁掛けエアコン

一昔前は各部屋ごとにエアコンを付ける事が主流でしたが、高断熱高気密の家ではそれは過剰になります

高断熱・高気密にした家ですと、計算上はエアコン1台での冷暖房が可能になりますが、それにはいくつかの条件も必要です。

まず、1階と2階とを吹抜けなどでつなぐことは重要なポイントです。
いかに性能的に可能とはいえ階段でつながっているだけでは、2階の一番奥まで冷暖房の気流を送る事が出来ません。

また送れたとしても、すぐの室温変更には不向きです(すぐに室温を変えられない)。24時間運転が基本のシステムといえます。

家の断熱性能もさる事ながら、換気計画を平行して考え、換気による気流の移動で室温を均一化させるなどの綿密な空調計画が必要になります。

1階はLDKに1台、2階は階段ホールに1台という設置が基本となります。

LDKに設置した場合、ここの室温をエアコンのセンサーが感知しますので、エアコンからみて一番遠い部屋(例えば洗面所)が設定した室温になっていなくても、リビングが設定温度に達してしまうと止まってしまう可能性があります。

メリット

設置コストは一番安い

取り換えも容易

量販店での購入も可

デメリット

換気計画と連動しての計画は必須

各部屋の温度ムラの可能性が残る(主たる部屋は基本的に希望温度より高めに設定がベスト)

急な温度変更は出来ない。(隅々までその設定温度が行き渡るのに数時間を要する)

室内にボコっとデカい室内機が取り付けられるのでインテリアとして不格好

注意する点

万が一や将来の事も想定して、各部屋にエアコンコンセント及び冷媒管用の開口を設置しておく方が良い。

床下エアコン+室内エアコン

1階、2階に各々冷暖房させるのでなく、1階を暖房専用床下エアコン、2階を冷房専用室内エアコンとしたミックス方式もオススメです

床下エアコンとは、市販の壁掛けエアコンを1階の床下に設置し、床下全体を暖めながら、床に設置した吹き出し口から、暖められた空気を各部屋に送り込むものです。 

床下エアコンは基本的に暖房専用になりますので、この暖気を2階に送る為にも吹抜けを使って2階と一体となった間取りは必須と言えます。

2階の室内エアコンは冷房専用機として設置しますので、こちらも吹抜けを介して1階に送れるようする必要があります。

このシステムも間取りでの工夫が必要になります

メリット

床下に暖かい空気を送るのでほんのり床が暖かい(床暖房ではありませんので注意)

室内で見えるのは床の吹き出し口だけなので見た目スッキリ。

脱衣・トイレも暖房できるのでヒートショックの心配も少ない。

メンテナンス、取り換え、ランニングなど壁かけエアコンと基本は同じなので比較的低コスト

デメリット

一般的な壁掛けエアコンを床下に使うのでメーカーの保証を受けられない。

床下エアコンは冷房用には使えないので、2階に冷房専用エアコンが必要

間取りの制限がある(吹抜けが無いと機能しにくい)

個別の温度設定ができない。

基礎断熱が必要など一般的な施工と違う為、施工技術・知識が必要

注意する点

単に床下にエアコンを付けるだけではだめ。よく理解した設計者でないと快適な室温を期待できない。

補助的に暖気冷気を引っ張るファン等が必要になってくる。

通常のエアコンは室内機本体に温度センサーが付いているので、リモコン(ワイヤードリモコン)にセンサーの付いている機種を選ぶこと

階間エアコン(カイカンと読む)

日経ホームビルダーよりお借りしました

吹抜けが無くても1台のエアコンで対応可能なのが、最近話題の階間エアコンです。

新住協(新木造住宅技術研究協議会)の代表理事である室蘭工業大学名誉教授・鎌田先生が考案された一般的なエアコンを使った冷暖房方式です。

1階の天井と2階の床との間にエアコンを設置し(2階から見れば床下エアコン)1台で上下階を同時に冷暖房出来る仕組みになります。

冷気は重いので夏場などの冷房期には、2階の床のガラリのファンで吹上げ、冬場の暖気は1階天井の吹き出し口のファンにて下げてあげる必要があります。

これの採用については2階床をささえる構造材など、初期計画時からしっかりとした計画が必要です。

できるだけ大きな梁が入らないよう、大空間は避ける。

また風が通りやすいような横架材(梁)の配置とするなどの構造的な工夫も更に必要であるといえます

また、私個人の見解ではありますが、雪深い寒冷地ではやはり厳しいのではないかと思いますので、基本的には5または6地域以南の温暖地用のエアコンシステムではないかと思います

メリット

2階の床下に暖かい空気を送るので床が冷たくならない。

室内が吹き出し口だけなのでスッキリ。

脱衣・トイレも暖房できるのでヒートショックの心配も少ない。

一般的な壁掛けエアコンを1台設置なので低コスト。

壊れても一般エアコン1台交換なので安価

吹抜けは無くても問題ないので、間取りに自由度が増える

基本24時間常時運転だが1台で済むためランニングコストも安価

デメリット

一般的な壁掛けエアコンを床下に使うのでメーカーの保証を受けられない。

1階の床下は暖気はいかないので、床下エアコンに比べるとひんやりする

各吹き出し口にファンが必要。音や直接的な風が気になるかも

エアコン周囲(特に吹き出し口付近)は必ず結露するので、断熱材で囲う事が必要

気流を廻す為、大きな梁が入ると動きにくい。小さく間を仕切れるのが基本。

個別の温度設定ができない。

注意する点

よく理解した設計者でないと快適な室温を期待できない。

通常のエアコンは室内機本体に温度センサーが付いているので、リモコン(ワイヤードリモコン)にセンサーの付いている機種を選ぶこと。

床暖房

文字通り熱源が床のすぐ下、あるいは床の中にあり、床自体が暖かくなるものです。

よく床下エアコンと混同されるのですが、床下エアコンは床下の空間を暖めるのため、床自体を暖める床暖房に対し床下暖房になります。

種類としてはガスや電気、灯油を使ってお湯を作りそれを循環させる温水式と、発熱体に電気を通して暖める電気式があります。

使う床材は、床暖房専用の床材を選ぶ必要があります。

メリット

熱が床を伝わり、ふく射によって部屋の内部に広がっていきます。

床から天井へと熱が立ち上る自然対流により、体はまんべんなく温もり、室温以上に暖かさを実感することができます。収納場所も必要なく掃除も不要です。

風や音、臭いもなく、埃を舞い上げることもありません。

デメリット

イニシャルコスト(設置費用)が高く、夏用の冷房用にエアコンが必要になります。

当然設置していない部屋は暖房が必要となる。

熱源は電気かガスか灯油になるが、エアコンに比べランニングコストが高い。

注意する点

床の仕上げ材が限定されます。お好きな床材が使えないことがあります。

また、床材によりワレスキマなどのリスクは残ります

薪ストーブ

薪を燃焼させ、ストーブ本体を暖めることによる輻射熱と、対流による効果で部屋(家)全体を暖める暖房方式です。

炎を楽しみながら、

ピザを焼いて見たり

料理に使ってみたり

と様々な使い勝手もありますし、部屋内のオブジェとしても素敵です。

また、その火力は機種にもよりますが50帖を超えるような物もあり、1台で家中の暖房が可能です。

しかし、残念ながら高気密・高断熱の家とはあまり相性の良い暖房方式ではありません。

高気密・高断熱のため室内に入る空気の量は今までのスキマ住宅とは違い制限されます。

そのため燃焼がうまくいかず、室内に煙が入ってきてしまったりします

基本は家の給気システムを1種換気とし、更にマキストーブ用に専用の給気口(ファン付き)を設置し、酸素を送れるように工夫をする必要があります。

メリット

何といっても炎の心地よい暖かさが魅力。

薪が用意できるなら燃料費は無料。

家中を暖められる大火力。

高断熱の為にあまり薪をくべなくても暖かさが持続

デメリット

煙突等周辺部材や施工費含めると高価。

薪が用意できなければ購入になり、結構な金額がかかる。

灰や煙突の掃除、薪の用意等、手間がかかる。

温度管理が難しい。

高断熱が為にあまり薪を燃やす必要がなく、炎が楽しめないかも。

注意する点

周辺の床、壁等を不燃材料で仕上げないといけない。

ペレットストーブは燃料は薪より調達しやすいが、暖房能力は低くペレットの落ちる音が気になる人もいる。

暖房設備としてよりも、趣味として薪ストーブを楽しみたい方におススメ。

まとめ

各設備それぞれの特徴とメリット・デメリットを書かせて頂きました。

単純にエネルギーを使わない暖房方法は?と考えれば薪ストーブが一番良いかと思います。
但し、上記にも触れたように、薪の準備や管理など、趣味として楽しめる方でないと長くは使えないと思います。

どの部屋も一定の温度で快適な暮らしをしたいとなると、ダクト式の全館空調がオススメです。
吹き出し口からの不快な風・音もありませんし、室内機もなく大変美しい室内となります。

但し、イニシャルコストは高く、比較的ランニングコストも高めです。
ダクトの清掃や機器の交換などのリスクは少なからず残ります。

室温一定は希望だけど、どちらも安価にしたいという方は、床下エアコンか、階間エアコンですね
但し、こちらは修練された工務店でないとうまく機能しません。

特に階間エアコンは、鎌田先生が考案されてまだ2、3年ですので、システムとしては成熟していませんし、出来る工務店は限られています。

残念ながら弊社もまだ取り組んだ事がありません。


これがうまく考えられればイニシャル・ランニング共に安価で暮らす事が可能となります。
吹き出し口には必ずファンが必要となりますので、その音と風だけが注意点ですね。

床暖房は、予算があれば別ですが必ずしも必要な設備ではありません。

床暖房が無くてもその他の暖房器具で暖める事は可能です。

逆に床暖房だけで、全部屋をまかなう事は難しく、他の暖房設備が必要になりますし、当然ですが冷房設備としてのエアコンも必要となります。


とはいえ、薪ストーブと同じでその暖かさは格別ですので、基本的な冷暖房とは切り離してお考え頂き、プラスアルファの暖房と考えて設置するのが良いと考えます

マルトの考え

では弊社としては何が一番良いかと言われると、、、

すみません。お客様の要望に合わせてご提案が解答になります。

今のところ予算に余裕があれば全館冷暖房をおススメしますが、上記の通りリスクもあります。

予算を抑えてなら階間エアコンですが、こちらはまだオススメと言えるだけの知識がありませんので、床下エアコンと室内エアコンが良いかと思います。

そこに将来的な事も考慮して、室内エアコンを足せるような仕組みにしていくのが良いかと思います。

ただこれも上記に書いたようにいくらかのデメリットはあります。

オフグリッドな暮らしにしたい!なら薪ストーブ一択になりますが、お客様の暮らし方、考え、ライフスタイルなど総合的に考えてご提案させて頂くのが一番ベストであると思います。

今後、機器の性能も、家造りの技術も進歩してきて、「これしかありません」というような完璧な方式が出来上がるかもしれませんが、現状では様々な状況に合わせてチョイスしていく事になります。

前提として大切なこと

何よりも大事で絶対疎かにしてはいけないのが家を高断熱・高気密にする事です。

これが出来なければ、どんなに素晴らしいシステムを組もうとも、まさに「絵に描いた餅」となってしまいます。
まずは、しっかりとした断熱気密の家にする事。

もう一つ忘れてはいけないのが、旦那は暑がりの寒がり、奥様は一定温が希望、娘さんは寒がり、息子さんは暑がり、なんてことはありませんか?

実は人によって快適だと感じる室温は様々なのです。

なので自分にとっての快適な室温、家族にとっての最大公約数の室温を前もって調べておくことは大切です。

冬の暖房時、何℃なら皆が満足できるのか。

22℃で寒いと感じる人は1枚羽織って、暑いと感じる人はTシャツになる。

そうすれば、暖房や冷房を使う時期が減り、結果省エネで家計にも省エネな家となります。


どうしても各人の適温にしたい場合は各部屋1台のエアコン設置。機器代はかかりますが、家は高断熱高気密なのでランニングは抑えられます。

おススメはしませんが。

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