2020.04.15最終更新日:2023/08/07

夏涼しくて冬暖かい家を、高断熱高気密で作るコツ

 

家を建てるなら、だれもが手に入れたい“夏涼しくて冬暖かい家”。

 

どこをどうすればそんな家が建つのか?

 

夏涼しくて冬暖かい家 

 

と謳っておきながら、実際に住み始めると「夏暑くて、冬寒いやん!!」ということが、残念ながらあります。

 

そうならないためにも、住宅会社の言うことを鵜呑みにすることなく、ご自分で考えられるようになりませんか?

 

まず暑さ寒さに対してどうしたいのか、考え方の違いがあります。

 

“夏少しの冷房で涼しくて、冬少しの暖房で暖かい家” 

“冷房なしで涼しくて、暖房なしで暖かい家” 

夏少しの冷房で涼しく、冬少しの暖房で暖かい家

夏涼しくて冬暖かい家

「夏涼しく冬暖かい家に住みたい!」

誰もが思う事だと思います。

各部屋をエアコンや暖房器具で暖めたり冷やす事も出来ますが、たくさんのエネルギーとたくさんのランニングコストを使う事になってしまいます。

現在の家造りだと設計と条件にもよりますが、エアコン1台でそれを叶える事が出来るのです。しかも家中どの部屋に行ってもほぼ同じ室温になります。

そのような暮らしを希望されるなら、家を高気密高断熱な性能の家にする事は必須になります。

でも正直な所、

「高気密高断熱の家」

と、ほとんどのハウスメーカー、工務店はその会社の特徴として謳っておりますので、「どこに頼んでも問題ないのでは?」と思われるかもしれませんが、残念ながらそれもちょっと違います。

実は高気密高断熱にはどの数字なら高断熱で高気密だという定義がないため、自分で高断熱だ!と言ってしまえば高断熱になってしまうのです。

では何を基準に判断すればよいのか?

夏涼しく、冬暖かい家が欲しい人にぜひ知っておいてほしい数値があります。

まずは断熱性能を示す数値であるUA値です。

私の住む多賀町(滋賀県)は日本全国を気候に合わせ8つの区域に分けた地域区分で5地域となり、現行の省エネ基準では0.87という数値を確保しなければなりません。

まず第一段階がここになります。

2021年4月から、家を建てる者(提供する者)は省エネ性能の説明義務化が法制化しましたので、ハウスメーカーや工務店からも必ず説明はありますが、忘れずにこの数値の確認をしてください。

でもここでご注意を。

この数値をクリアしたからといって、夏も冬も快適な暮らしが出来るかというとそうではありません。残念ながら、建てる為の最低条件をクリアしたというだけで、まだまだ「夏暑くて冬寒い」家のままです。

上を見ればキリはありませんし、もちろん断熱性能だけで快適が決定する訳ではありませんが、最低でもUA値は0.5以上ないと、ご希望される「夏涼しくて冬暖かい」暮らしを光熱費を抑えながら得る事は出来ないと思います。

注)UA値も、あとで述べるC値も数値が小さければ小さいほど性能は良くなります

次にC値です。これは家のスキマを表す数値でして、つまり気密の性能を表しています。

UA値(高断熱)については、さきほど述べたような一応の基準がありますが、このC値については法律などで規定されておりません。

だから3.0であろうが0.1であろうが、あなたが契約しようとしている会社さんが

「高気密の家です!」

と言えば、高気密になってしまうんです。

規定もルールもありませんからね、

怖いなって思います。

こちらについては、数値の基準が無いので何とも申し上げにくい所ではありますが、やはり1.0は欲しい所で、0.5までいけば理想的だと思います。

ざっくりでいうと35坪ぐらいの家で1.0だと携帯電話の大きさぐらいのスキマで、0.5だと名刺ぐらいのスキマがあるとお考え下さい

先程の断熱性能を表すUA値は設計段階で出される数値ですから契約前にお答え出来ますが、C値については建物が出来てからしか出せない数値になります。

「弊社の建てる家は0.4以下です」

と言っても必ず出来るかどうかは、完成してからしかわかりません。

ですので、高気密の家を謳っている工務店さんにC値を尋ねる時は、もちろん会社の基準の確認は必要ですが、”気密測定”をしているかどうかの確認も忘れず行って下さい。

「普段から0.5出してますから、今はやってません。でも大丈夫ですよ」

なんて言葉で安心してはいけませんよ。

測らなければわからないのが”気密”です。

補足になりますが、断熱性能は設計段階で出せる数値ではありますが、しっかり断熱工事をしていなければ設計時の能力を発揮する事が出来ません。


高断熱、高気密は、数値の確認も大事なのですが、いかにしっかりとした施工をしているかが、実は一番重要なのです。

そうは言っても、こんな数字覚えるの面倒くさいな なんて方もいらっしゃるかもしれませんので、もっと簡単にしっかり高断熱高気密に取り組んでいる会社さんかどうかわかる質問があります。

「御社の断熱性能はG1グレードですか?それともG2ですか?ひょっとして省エネ基準ですか?」

「UA値や、C値ってよく聞くのですが何ですか?」

これらに答えられなかったり、UA値・C値が説明できない会社に“夏涼しく冬暖かい家“を求めるのは、そもそも無理があるといえます。

検討先からは外されても良いかもしれません

ちゃんと答えてもらった時点でまずは第一段階はクリアですが、そもそも数値の解釈は一般の方には大変難しいと思いますので、その会社さんが建てた家の具体的な冷暖房費を聞いてみるのも良いかもしれません。

最近では、それぞれの家、それぞれの家庭の暮らし方による様々なシミュレーションが出来るようになっています。
あなたの家の間取りや日射取得(窓から入る太陽からの熱)によってどの程度の冷暖房費がかかるかわかりますので、一つの検討材料としては良いかもしれませんね

ここからは先程から述べている事をもう少しだけ詳しく説明させて頂きます。

前に書いた分でも路頭に迷った方はここからは読まないで下さい(苦笑)

興味の沸いた方だけお読み頂ければと思います。

断熱性能の基準値

夏涼しくて冬暖かい家

先の建築会社の見分け方の質問の中に、G1グレードや省エネ基準という言葉が出ました。

まずはこれらが何であるかを簡単に説明しましょう。

先にも述べましたが、

日本では国を1から8の地域に分けて、求める断熱性能の基準を変えています。

例えば北海道の旭川市は1地域で、沖縄は8地域になります。

弊社のある滋賀県は、近江八幡市、草津市、守山市は6地域でそれ以外は5地域に区分されます。(新区分)

その地域ごとにUA値を設定しておりまして、これを建築時には遵守しなければいけないようになっております(改正省エネ法)

但し、これは義務化ではありません。


極論言うと望ましいという数値になります。しかしながら工務店はこの数字を遵守出来ない場合、

必ずお客様に説明し、了承を得るよう説明する事が”義務化”されました。

玉虫色決着が大好きな日本人らしいですね


義務化すれば良いのに、この法律では「説明して了承える事を義務化」としています。つまり了承が得られれば守らなくても良いんですね。


賢明な皆さまは決してそんな説明にハンコは押されないと思いますがご注意下さい

さてUA値の説明に戻ります。

UA値とは家全体の外部に面している面積(外皮面積)に対して、どれくらいの熱量が外に逃げているかを表します。

数字の小さいほど性能が高くなります。小さい数字の方が良いということですね。

現在、改正省エネ基準で推奨されているUA値は弊社のある5地域の場合

省エネ基準 UA値0.87以下

ZEH(ゼッチ)基準 UA値0.6以下

また民間が作った断熱基準としてHEAT20という基準がありそこでは

G1グレード 0.48以下 

G2グレード 0.34以下 

G3グレード 0.23以下

となっています。

さて、いろんな基準が出てきました。

先程から説明している省エネ基準は、国土交通省の定める基準値になります。

残念ながらこの基準では全くと言って良いほどダメな断熱性能です。

またZEH(ゼロエネルギー住宅の略)の基準と言われる0.6でも、世界のレベルを見た時にあまりにも低いということで、民間レベルで考えられたHEAT20という基準が生まれました。

一番性能の良い基準のHEAT20については次にまとめてみました。

HEAT20とは?

夏涼しくて冬暖かい家

HEAT20とは長期的視点に立ち、住宅における更なる省エネルギー化をはかるため、断熱化された住宅の普及啓蒙を目的とした団体です。

簡単に言えば、今の日本の住宅の性能レベルは低すぎる!

と、改善に立ち上がった有志団体です。

メンバーは研究者、住宅・建材生産者団体によって構成されています。

そのHEAT20が冬の暖房期に部屋に居る時だけ暖房をつける想定(5地域)でのシミュレーションしています。

以下が出典元です。

■ 暖房期最低室温 5地域 部分間欠暖房 

HEAT20では、G1は最低室温をおおむね10℃に保つことにしていますが、これは非暖房室の表面結露の防止、すなわち住まいの健康を主目的にしているものです。

G2は1・2地域を除けばおおむね13℃、

G3はおおむね15℃以上を確保することとしており、これらは室内の温度むらを小さくし、住まい手の暮らしやすさの向上や温度ストレスを考え設定しています。

 ・省エネ基準の家:おおむね8℃を下回らない

 ・G1グレードの家:おおむね10℃を下回らない

 ・G2グレードの家:おおむね13℃を下回らない

 ・G3グレードの家:おおむね15℃を下回らない

■ 住宅内の体感温度が15℃未満になる面積比割合  5地域 部分間欠暖房  

この指標は、単純に住宅内のどこかで15℃未満となる時間の割合を示すものではなく、住宅内部で15℃未満となる時間・面積が全体のどれくらいあるのかを示したものです。

実際の住宅においては、時間のみならず空間の温度むらも考慮して検討することが好ましいという意図から、HEAT20独自の指標で説明しています。

 ・省エネ基準の家:30%程度

 ・G1グレードの家:20%程度

 ・G2グレードの家:15%程度

 ・G3グレードの家:2%程度

■ 省エネ基準と比較した暖房負荷削減率  5地域 部分間欠暖房 (光熱費に直結します)

HEAT20では、省エネルギー基準の住宅に対して、どの程度の削減効果がありそうかの目安を「平成28年基準からの暖房負荷削減率」として示しています。

 ・G1グレードの家:約45%削減

 ・G2グレードの家:約60%削減

 ・G3グレードの家:約80%削減

以上を見ると当然G3グレードが一番性能がいいので『G3グレードにして下さい!』と言いたくなりますね。

もちろんG3グレードにこしたことはないですが、実はG2レベルにするのにも5地域(地域区分表)の場合は付加断熱(壁の中と外の2重断熱)までやらないと現状では実現できない可能性が高く、どうしてもイニシャルコストが上がります。

このあたりのバランスについては後で述べることにします。

高断熱は夏を基準にするのか?それとも冬か?

夏涼しくて冬暖かい家

割と暖かい地域に住んでいると

夏の暑さ対策の方が重要だ!

と言う方もいらっしゃるでしょう。

日本の住宅は夏を旨とすべし、なんて言葉もありますからね。

しかし、冬の断熱性能を上げると自ずと夏の遮熱性能も上がってきますので

断熱計画は冬を想定して考えるのが良いでしょう。

(いくつか夏用に考えるポイントはあるのでご心配なく)

事実、電気代は夏より冬の方が圧倒的に増えます。弊社のお客様のデータを見ると夏の電気代の1.5~2倍が冬の電気代になります。

断熱に関わる数値の話・推奨する基準数値

夏涼しくて冬暖かい家

勿論数値がいいに越したことはありませんが、費用対効果を考慮した上で、

個人的には5地域ならば、G2により近いG1グレードで良いと思います。

(6、7地域ならG2グレードの仕様は大したコスト増もなく出来ます)

サクっと個人的な推奨値。(5,6地域)

UA値:0.50以下

C値:1.0以下

以上を最低ラインにしておけば光熱費も抑えられ、家じゅうがおおむね同じ温度で、体に優しくヒートショックや結露も起こりにくい家になると思います。

ただ、数値だけに囚われて建築会社の数値合戦に惑わされないようにしましょう。

冷房なしで涼しくて、暖房なしで暖かい家

パッシブデザインで作る家

次は“冷房なしで涼しくて、暖房なしで暖かい家”です。

これはパッシブデザインの考え方の一つで、家の形や配置、間取りによって作ります。

パッシブデザインについてはこちら ↓

こちらも高断熱高気密は大前提として考えます。

“冷房なしで涼しくて”は、

いかに日射を遮って風を通すかがポイントです。

“暖房なしで暖かい”は、

いかに日射を取り入れて熱を逃がさないかがポイントです。

相反することなので難しいですが工夫をすればいい着地点が見つかります

基本熱を逃がさないためには窓は小さく少なく高性能な方がいいのですが、南からは冬場の日射を取り入れなければいけません。

よって東西北は小さく少なく遮熱性の高い窓にし、南面は大きい窓で日射を取り入れるのが基本になります。

ただし、それでは夏は暑いので、南面はひさしを付けたり外付けブラインドやヨシズ等を利用して遮ります。

外付けブラインドは目隠しにもなりますし、多少の雨なら窓を開けられる、そして窓の外で熱を遮るのでお勧めですが、まだまだ価格が高く効果による冷房費の削減に限って計算すると元は取れません。

割と安く効果があるのはひさしです。

ヨシズが合わない洋風の外観でも使えます。

注意するのはひさしの大きさですが、冬の太陽は低いとは言え深すぎると日射を取り入れることができませんので、冬に日が入り夏は遮る深さにしましょう。

夏場の過剰な日射取得は掃き出し窓(テラス窓)はひさしの深さ、腰窓や高窓は軒の出によりある程度コントロールできるのです。

風の吹く方向は地域ごとにデータは有るものの、周辺の環境により変わってきたり日によって違ったりするので、出来るだけ4方向から取り入れるように考えましょう。

出来れば2階ホールの窓は高い所に付け熱い空気を排出しやすくします。

以上が基本的な考え方ですが注意したいのは、南側の窓から見えるのは隣の家の壁と窓や人通りの多い道路という景色で、西側は大きく開けていて眺めのいい景色、って時に基本を守っていてはロケーションがもったいないですね。

西側の大きな窓は夏の西日の暑さというリスクはありますが、眺めのいい景色を得る事で心豊かにすごす暮らしを優先しがっつりと大きな窓を取り入るようにしましょう。

パッシブデザインは素晴らしい設計手法ではありますが、実際のところ、弊社のある滋賀県多賀町ではいくら高断熱高気密でパッシブデザインの家を造ったとしても、無暖房無冷房の家にはなりません。

特に冬場は雪も多く陽射しがゼロの日が長く続きますし、最近の異常気象で夏場の気温もハンパなく上がっています。

ですので、何かだけ特化させるような考え方ではなく、

家全体をバランス良く設計する事が大切だと考えます。

基本は基本で固執しすぎないようにしなければなりません。

明るい部屋

夏涼しく冬暖かいには関係ないと思われる“明かり”についても少し説明します。

一見関係ないようですがパッシブデザインの要素の中には、自然光を取り込む「採光」という考え方があります。

軒を深くしたら部屋が暗くなるんじゃないか?

という疑問から窓にも関係してくるので、一緒に考えなければならない項目です。

通風計画と共にどの部屋も日中は照明を点けなくても過ごせるところに、窓を配置したいところです。

どうしても無理な場合は、照明器具もLEDが主流ですので照明で補うのも有りかと思います。

ただ、リビングや子供部屋等の居室は自然光だけで過ごしたいですね。

夏の日射を遮るために軒を深くして部屋が暗くなると思われがちですが、

そこまで暗くはなりません。


例えば、北側に公園があったとします、家の中から見た時に北面の窓は直射が入らない窓ですので暗く思われガチですが、その公園の中心から見るとあなたの家の方向は南面、つまりサンサンとその公園には光が降り注いでいます。

北面でがありますが、その反射で充分な明るさが得られるぐらいですから、多少軒が深くても外が明るければ充分、光は取り込めますので安心して下さい

夏涼しくて冬暖かい家を、高断熱高気密で作るコツ

夏涼しくて冬暖かい家が欲しいと思ったら、ついつい性能数値ばかりに目が向いてしまいます。

そこを売りにする会社さんが間違いという訳ではありませんし、高性能な家がダメな訳ではありませんが、それだけでは”家に帰って安らぐ”とか”心地よい暮らし”という部分を欠落させてしまう可能性もあります。

まずは健康に過ごせる最低ラインから希望と予算を照らし合わせ、性能を上げていくのがいいのではないでしょうか。

性能を上げるには窓の選定や断熱施工、気密施工などもポイントになってきますが、それらはまたの機会にします。

依頼先に求める断熱性能がある程度見えたなら、その要望を伝えましょう。

それにこたえられる会社なら窓の選定などもおのずと出来ていると思います。

そして可能なら施工現場の見学や、分からなくても施工方法を聞いてみるのも良いかもしれません。

しっかりしている会社ほど、そういった説明もしっかり出来るとおもいます。

ここまでくればほぼ間違いありませんが、コツというか、やはり気を付けて頂きたい点は、

性能だけを追い求めるあまり、コストが嵩んでしまい、一番大事な「暮らし」が貧しいものになる事です。

折角快適な空間を作れたのに、そこから見える景色を遮り、風通りも考慮せず、家族の集まる居場所を作くれなかったとなるとまさに本末転倒です。

数字的な部分もすごく大事ですが、そういう部分も見逃さないよう総合的に家造りは進める必要があります。

玄関ドアも断熱性能の高いものを選びたいですね

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家づくりにはたくさんの落とし穴があります。

建てる時には教えてくれないこともあります。

誰だって出来るだけ安く家を建てたい

それは当たり前のこと

でも、建てる時の費用を安くするための選択が

光熱費のやたらかかる、寒くて暑い家になってしまったら?

10年後、20年後に何百万とコストのかかる家になっていたら?

残念ながらそういったことが実際にあるのです

建てる前に知ってたら、こうしていたのに!

という事も少なくありません。

そんな悔しい思いをする人を一人でも減らしたくて

「家を建ててからかかるお金の話知っていますか」

という小冊子を作りました。

これを読んだうえで、

納得の家づくりをして頂きたいと、心から願っています。

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